国境を越える顧客に向けたデジタルプロダクトの設計
通貨、信頼、決済手段、サポート時間。国境を越えて顧客にサービスを届ける創業者が、最初のプロダクトでつまずきがちな4つのポイントです。
私たちが一緒に仕事をする創業者の多くは、2つの場所にまたがるビジネスを営んでいます。湾岸諸国やヨーロッパからのゲストを迎えるケーララ州のリゾート、パキスタンやアフリカのバイヤーに販売する日本の機械ディーラー、海外の顧客にも商品を届けるパキスタンのブランド。国境の向こうの顧客に向けてつくることは、自分の街の顧客に向けてつくることとは違います。そしてその違いが技術的なものであることは、ほとんどありません。
ここでは、最初のプロダクトでつまずきやすい4つの領域と、代わりにどうすべきかをご紹介します。
1. 通貨と価格表示
訪問者が普段使っていない通貨で表示された価格は、頭の中で換算しなければならない価格です。そして換算のために手が止まった瞬間、迷いが入り込みます。顧客が複数の国にまたがっているなら、価格をどう表示するかを意識的に決めましょう。
- 可能な範囲で、顧客が使っているであろう通貨で価格を表示し、決済時には実際に請求される通貨を明示する。
- 送料、関税、両替手数料、税金など、最終的な金額を変えるものはすべて事前に明示する。
- 高額商品やオーダーメイド品の場合は、誤解を招く「〜から」の価格表示よりも、分かりやすい「見積もりを依頼する」導線のほうが成約につながりやすい。
2. 顧客が実際に使う決済手段
カード決済は世界共通ではありません。多くの市場では、銀行振込、現地の電子ウォレット、代金引換、分割払いが求められ、国外ではまったく別の手段が期待されることもあります。自分が慣れている方法しか受け付けない決済画面では、買う気になっていた顧客を逃してしまいます。
決済画面を設計する前に、顧客がどこにいて、それぞれがどの支払い方法を好むのかを書き出しましょう。そのうえで、10の手段を中途半端に揃えるのではなく、上位2〜3の手段にしっかり対応します。大口のB2B取引のようにオンライン決済が難しい場合は、問い合わせの導線を決済画面と同じくらい丁寧につくり込みましょう。
3. 信頼はページの上で勝ち取るもの
店舗を訪れることも、直接会うこともできない顧客にとって、判断材料はWebサイトだけです。細部の一つひとつが、信頼を積み上げるか、損なうかのどちらかです。
- ストックフォトではなく、実際の店舗や事業所、商品、チームの写真。
- 電話番号、所在地、対応時間など、分かりやすい連絡先情報。
- 平易な言葉で書かれ、目につく場所に掲載された保証、配送条件、返金ポリシー。
- 可能であれば、訪問者と同じ国の顧客によるレビューや推薦の声。
- 高速でエラーのないページ。遅いサイトや壊れたサイトは、対応が遅くずさんな会社だというサインとして受け取られます。
国境を越えた顧客が最初に買うかどうか決めているのは、商品ではありません。あなたの会社が本当に実在するのかを見極めているのです。その問いには、聞かれる前に答えておきましょう。
4. 言語、タイムゾーン、サポート
顧客の話す言語が異なるなら、きちんとした2か国語対応のサイトをつくる価値は十分にあります。ここでいう「きちんと」とは、人の目でチェックした翻訳、全ページに設置された言語切り替え、そしてどのページがどの言語版なのかを検索エンジンに伝えることです。高級ブランドにとって、機械翻訳のページは役に立つどころか逆効果になることも少なくありません。
サポート時間も同じくらい重要です。ロンドンの顧客が現地時間の午後9時にラホールの企業へメッセージを送れば、ラホールでは午前1時です。「1営業日以内に返信します」のように対応の目安をはっきり示し、WhatsApp、LINE、メールなど、その市場の人々がすでに使っているチャネルを用意しましょう。そして、週末に問い合わせが放置されないよう振り分けの仕組みを整えることも大切です。
顧客が検索する場所で見つけてもらう
海外の顧客は、自分の言語で、自国版のGoogleを使い、自分なりの言い回しで検索します。各市場で実際に使われている検索語句を調べ、重要なサービスや商品にはそれぞれ専用のページを用意しましょう。さらに、高速なページ、構造化データ、サイトマップ、正しい言語タグといった技術的な基本を整え、各ページが誰に向けたものなのかを検索エンジンが理解できるようにすることが大切です。
簡単なチェックリスト
- 主要な市場ごとに分かりやすい通貨で価格が表示され、決済時に想定外の金額が出てこない。
- 各市場の主要な決済手段に対応している。または、丁寧につくり込まれた見積もり依頼の導線がある。
- 実在の人、実在の場所、実際の連絡先、明確なポリシーがサイトに掲載されている。
- 対象言語はすべて人の目でチェックされ、どのページからでも切り替えられる。
- サポートのチャネルと対応時間が、顧客が連絡してくる場所と時間帯に合っている。
これらを正しく押さえるために必要なのは、多くの場合、技術を増やすことではありません。まだ会ったことのない顧客の目で、自分のビジネスを見ることです。国境を越える顧客に向けたプロダクトを計画中で、第三者の視点が欲しい場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
